歯がグラグラする原因と治療法|失う前にできる対策を歯科医が解説

ある日、食事中に歯が揺れていることに気づいた。

そんな経験をされた方は、少なくないと思います。子どもの頃に乳歯がグラグラした感覚とは違い、大人になってからの歯のグラつきは、何か深刻な問題が起きているサインです。放置すれば、最悪の場合は抜歯という結果につながることもあります。

歯がグラグラする原因は、実は1つではありません。歯周病・歯根破折・重度の虫歯・被せ物の脱落・噛み合わせの問題・外傷など、複数の原因が考えられます。それぞれに適した治療法があり、早期に対処することが歯を守る最大の鍵です。

この記事では、補綴歯科専門医・咬み合わせ認定医として長年診療を続けてきた立場から、歯がグラグラする原因と治療法、そして自宅でできる予防対策を詳しく解説します。

歯のグラつきが気になり始めたら、お早めにご相談を

歯がグラグラする原因はさまざまです。原因を正確に把握することが、適切な対処への第一歩となります。気になる症状があれば、まず検査でお口の状態をご確認ください。

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歯がグラグラする6つの原因

大人の歯がグラつくのは、何らかの異常が起きているサインです。

健康な歯は、歯茎(歯肉)と歯槽骨という骨によってしっかりと支えられています。この支持構造に問題が生じると、歯が揺れ始めます。以下に、主な6つの原因を詳しく解説します。

①重度の歯周病

歯がグラつく原因として、最も多いのが歯周病です。

歯周病は、口腔内の歯周病菌と呼ばれる細菌によって歯肉に炎症が引き起こされる病気です。初期段階では「歯肉炎」として歯茎だけに炎症が限られますが、放置すると炎症が歯槽骨にまで広がり、骨が溶け始めます。歯槽骨は歯を支える土台ですから、これが大きく溶けてしまうと歯がグラグラと動くようになります。

歯周病の怖いところは「沈黙の病」とも呼ばれるほど、初期段階では痛みがほとんどないことです。気づかないうちに進行し、歯がグラつき始めた頃には中等度以上まで悪化していることが少なくありません。

特に35歳を過ぎると、歯周病によって歯を失う割合が高くなります。日本人の成人の約8割が歯周病またはその予備軍とされており、決して他人事ではありません。

さらに近年の研究では、歯周病菌が心臓病・肺炎・糖尿病を引き起こす危険性があることも明らかになっています。口の中だけの問題ではなく、全身の健康に直結する病気です。

②歯根破折(歯の根が割れた状態)

歯の根っこが割れると、歯が揺れることがあります。

「歯根破折」とは、歯の根の部分に亀裂が入ったり、割れたりした状態です。歯ぎしりや食いしばりによる強い力、神経を抜いた後の歯の脆弱化などが主な原因として挙げられます。歯根破折が起きると、噛むたびに痛みや違和感を感じたり、歯茎が腫れて膿が出たりすることもあります。

神経を抜いた歯は水分が失われて脆くなりやすいため、歯根破折のリスクが高まります。だからこそ「なるべく神経を残す治療」が重要なのです。

③重度の虫歯による根尖性歯周炎

虫歯が進行すると、歯の根の先に膿が溜まることがあります。

この状態を「根尖性歯周炎」といいます。虫歯菌が歯の内部の神経にまで到達し、神経が死んだ状態のまま放置されると、根の先から細菌が広がり膿が溜まります。この膿が周囲の骨を溶かすことで、歯が浮いたような感覚やグラつきが生じます。一度神経の治療をした歯でも、再感染によって同様の状態になることがあります。

④被せ物・差し歯の脱落

治療済みの歯がグラグラする場合、被せ物や土台が外れかかっている可能性があります。

被せ物は専用の接着剤で歯に固定されていますが、経年劣化によって接着力が弱まることがあります。また、被せ物と歯の接着面に虫歯ができると、接着力がさらに低下します。このような場合、被せ物ごと歯が動いているように感じることがあります。

⑤噛み合わせの問題・歯ぎしり・食いしばり

噛み合わせが悪いと、特定の歯に過度な力が集中します。

この状態が続くと、歯を支えている骨に強い負担がかかり、歯周病の進行を加速させることがあります。また、歯ぎしりや食いしばりは、歯に長時間強い力をかけ続けるため、歯槽骨への負担が大きくなります。睡眠中やパソコン作業中など、無意識に行っていることが多く、気づきにくいのが特徴です。

⑥外傷による歯の脱臼

転倒やスポーツ中の衝突など、外部からの強い衝撃によって歯が脱臼することがあります。

外傷を受けた直後は歯が揺れていても、適切な処置を行えば歯を保存できる可能性があります。外傷後はできる限り早く歯科医院を受診することが重要です。

歯のグラつき度(動揺度)の分類

歯のグラつきには、程度によって段階があります。

歯周治療において、歯のグラつき度は診断や治療計画に影響を与える重要な検査項目です。一般的に以下のように分類されます。

  • 0度:生理的動揺範囲(水平方向へ0.2mm以内)
  • 1度:軽度の動揺(水平方向へ0.2〜1mm程度)
  • 2度:中等度の動揺(水平方向へ1〜2mm程度)
  • 3度:重度の動揺(水平方向へ2mm以上、または垂直方向への動き)

健康な歯でも、わずかに揺れることがあります。これを「生理的動揺」といい、0度に相当します。歯がグラつき始めるのは、歯周病の進行度でいうと中等度以上の状態です。グラつきを感じたら、すでに歯周病がかなり進行していると受け止めてください。

歯のグラつきの原因を調べ、状態に合った対処法をご提案します

  • 歯周病・噛み合わせ・外傷など原因に応じた検査を実施
  • 歯を残す方向での治療を優先してご提案します
  • やむを得ず抜歯となった場合の対処法もご相談いただけます

原因別の治療法

歯がグラグラする原因によって、治療法は異なります。

大切なのは、「なぜグラグラしているのか」を正確に診断することです。原因を特定せずに治療を進めても、根本的な解決にはなりません。以下に、原因別の治療法を解説します。

歯周病の治療

歯周病の治療は、まず原因となる細菌のコントロールから始まります。

歯石や歯垢(プラーク)を除去するスケーリングやルートプレーニングを行い、歯肉の炎症を抑えます。中等度の場合、歯の周りの汚れや歯石を取ることで歯肉が引き締まり、グラつきが改善することがあります。部分的に骨が溶けてきた場合には、骨を再生する「歯周組織再生療法」を行うこともあります。

重度になり、骨が大きく溶けてしまった場合は、残念ながら抜歯が必要になることもあります。ただし、重度でも外科的処置によって歯を残せるケースもあるため、まずは専門医に相談することをお勧めします。

当院では、顕微鏡による細菌検査を行い、患者さんごとに口腔内に存在する歯周病菌の種類や活動性を調べた上で、個別の対策を実施しています。人それぞれ細菌の種類が異なるため、画一的な治療ではなく、その方に合ったアプローチが重要です。

歯根破折の治療

歯根破折の治療は、破折の程度と位置によって大きく異なります。

軽度の亀裂であれば、接着処置によって歯を保存できる場合もあります。しかし、根の深い部分まで割れてしまっている場合は、抜歯が必要になることが多いです。歯根破折は、神経を抜いた歯に起こりやすいため、できる限り神経を残す治療が予防の観点からも重要です。

根尖性歯周炎(虫歯による膿)の治療

根の先に膿が溜まっている場合は、「根管治療」を行います。

根管治療とは、歯の内部の感染した組織を除去し、根管内を清潔にして封鎖する治療です。適切な根管治療によって、膿が改善され、歯のグラつきが落ち着くことがあります。ただし、骨の溶解が広範囲に及んでいる場合は、抜歯が必要になることもあります。

被せ物・差し歯の再装着

被せ物や土台が外れかかっている場合は、状態を確認した上で再装着または作り直しを行います。

接着面に虫歯がある場合は、まず虫歯の治療を行ってから被せ物を製作します。被せ物の下に虫歯が進行していることは珍しくないため、グラつきを感じたら早めに受診することが大切です。

噛み合わせ・歯ぎしりへの対応

噛み合わせの問題がある場合は、歯を少し削って調整することがあります。

また、歯ぎしりや食いしばりには「ナイトガード(マウスピース)」の装着が有効です。就寝中に装着することで、歯や歯槽骨への過度な負担を軽減できます。場合によっては、矯正治療によって噛み合わせ自体を改善することも選択肢の一つです。

抜歯後の選択肢

残念ながら抜歯が避けられないケースもあります。

しかし、抜歯後もさまざまな治療で噛む機能を回復させることができます。主な選択肢は以下の通りです。

  • インプラント:顎の骨に人工歯根を埋め込み、天然歯に近い感覚で噛める治療法
  • ブリッジ:隣の歯を支台にして橋渡し状に人工歯を装着する治療法
  • 入れ歯(義歯):取り外し式の人工歯。部分入れ歯と総入れ歯がある

抜歯後は時間が経つにつれて顎の骨が吸収・減少していきます。骨が減ると、その後の治療が難しくなることがあります。抜歯後の治療は、できるだけ早めに計画することをお勧めします。

とはいえ、抜歯はあくまでも最終手段です。「歯を抜かない」という選択肢を最大限に追求することが、長期的な口腔の健康につながります。

自宅でできる予防対策

歯を守るために、日々のケアは欠かせません。

歯がグラグラする状態になってから対処するのではなく、そうならないための予防が最も重要です。以下に、自宅でできる具体的な対策をご紹介します。

正しいブラッシング

歯周病の原因となるプラーク(歯垢)を毎日しっかり除去することが基本です。

歯ブラシだけでは歯と歯の間の汚れが取り切れないため、デンタルフロスや歯間ブラシを併用することをお勧めします。特に歯と歯茎の境目(歯周ポケット)は、歯周病菌が溜まりやすい場所です。ブラシを45度の角度で当て、やさしく丁寧に磨くことが大切です。

生活習慣の改善

喫煙は歯周病を悪化させる大きなリスク因子です。

タバコに含まれる成分が歯茎の血流を悪化させ、免疫機能を低下させます。また、睡眠不足やストレスは歯ぎしり・食いしばりを引き起こしやすくなります。規則正しい生活習慣を意識することが、歯の健康維持にもつながります。

定期的な歯科検診

歯周病は初期段階では自覚症状がほとんどありません。

だからこそ、定期的な歯科検診が非常に重要です。3〜6ヶ月に1回の定期検診とプロフェッショナルクリーニング(PMTC)を受けることで、歯周病の早期発見・早期治療が可能になります。80歳になっても20本の歯を残すという「8020運動」の達成には、継続的な予防ケアが欠かせません。

下北沢西口歯科クリニックの「歯を守る」治療方針

「なるべく削らず、神経をとらない、歯を抜かない」

これが当院の治療方針の根幹です。一度削ってしまったり、抜いてしまった歯は元に戻りません。だからこそ、できる限り健康な歯質を残す治療を心がけています。

虫歯治療においては、MI法(最小限歯質削除療法)を導入しています。従来の治療では保持形態をつけるために健全な歯質まで削る必要がありましたが、MI法によってマイクロスコープを使用して歯を20倍に拡大し、必要最小限の削除量で虫歯治療を行うことが可能になりました。

また、MTAセメントを用いた神経を守る治療も提供しています。MTAセメントは生体親和性が高く、強い殺菌・抗菌作用を持つ歯科材料です。虫歯が神経の近くまで進行している場合でも、MTAセメントを患部に充填することで神経を保護し、象牙質の再生(第三象牙質の形成)を促します。すべての虫歯に適用できる治療法ではありませんが、適切な症例に用いることで歯を大きく削ることなく、神経を残せる可能性が高まります。

歯周病治療では、顕微鏡による細菌検査を実施しています。患者さんごとに口腔内の細菌の種類や活動性が異なるため、個別の細菌データに基づいた対策を行っています。

当院は下北沢駅西口から徒歩1分の好立地にあり、土曜・祝日も診療を行っています。平日お忙しい方にも通院しやすい環境を整えています。

開院から39年の実績を持ち、補綴専門医・咬み合わせ認定医・インプラント認定医が在籍しています。歯のグラつきでお悩みの方、他院で抜歯を宣告された方も、まずはご相談ください。

まとめ

歯がグラグラする原因は、歯周病・歯根破折・重度の虫歯・被せ物の脱落・噛み合わせの問題・外傷の6つが主に挙げられます。

放置すれば抜歯のリスクが高まります。しかし、早期に適切な治療を受けることで、歯を守れる可能性は十分にあります。「少し揺れているかな」と感じた段階で、迷わず歯科医院を受診してください。

歯を失う原因の大半は、虫歯と歯周病です。日々の丁寧なブラッシングと定期検診を続けることが、80歳になっても自分の歯で噛める未来への最善の投資です。

歯にやさしい治療で、あなたの大切な歯を長く守るお手伝いをします。

▼虫歯・歯周病治療について、詳しくはこちらをご覧ください。

下北沢西口歯科クリニック 虫歯・歯周病

下北沢西口歯科クリニック

東京都世田谷区代田|下北沢駅西口

診療時間
月・火・水・金  9:30〜13:00 / 14:30〜19:00
木・土            9:30〜13:00 / 14:00〜18:00
日曜定休

著者情報

下北沢西口歯科クリニック 院長 平澤 正洋

<経歴>
昭和大学歯学部卒業
東京医科歯科大学歯学部非常勤講師
米国、ニューヨーク大学大学院インプラント科 短期留学 修了

<資格・所属>

 

厚生労働省認定 臨床研修指導医
日本補綴歯科学会 専門医(被せ物、ブリッジ、義歯、インプラントなどを取  り扱う専  門医)
日本顎咬合学会 認定医(咬み合わせ認定医)
インビザライン 認定
ストローマンインプラント社認定
ノーベルバイオケアインプラント 認定
日本口腔インプラント学会
日本歯科先端技術研究所

日本臨床歯科学会 審美治療・ラミネートベニアコースインストラクター